治一郎のオンラインショップには、バウムクーヘンを中心に、詰め合わせや季節の贈り物など、さまざまな商品が並びます。お客様が選びやすく、スムーズに購入でき、確実に届くよう管理をすることが、佐藤晴菜さんの仕事。
「お客様のお顔を見て販売することはできませんが、できるだけ機械的にならないよう、お一人おひとりに合わせた接客をしたいと思っています」
お客様の気持ちを想うこと
その理由は、ひとえに「喜んでいただきたいから」。それが自分のやりがいであり、しあわせだと話します。
佐藤さんが、そのようにお客様の喜ぶ姿にしあわせを感じたのは、入社してすぐに配属された店舗での接客業務がきっかけでした。
「最初の頃は『いらっしゃいませ』と『ありがとうございました』しか言えませんでしたが、お客様と接するうちにその言葉以上のコミュニケーションが重要だと実感しました。お客様がどんな思いでお店に来てくださっているのかをいつも考える人でありたい」
『お客様の気持ちを想う』ために実践したのは、まわりの人を見て想像すること。通勤途中の電車や、街を歩く人たちを見て、服装や持ち物などから、どんな気持ちで、どんな状況なのかをひたすら想像することでした。
「ビジネスマンが手土産を持っていたら、お得意先に持っていくのかな、と。夕方、足早に歩く女性がいたら、お子さんを迎えにいくところかな、と。そうすると、自然と店頭にいらっしゃったお客様に対しても想像力が働いて、接客のバリエーションを広げられるようになったんです」
やがては「あなたから買いたくて来たよ」というお客様も現れるようになり、それが喜びにつながったと振り返ります。
コミュニケーションを大切に
それから3年後、生産事業部に異動し、工場や店舗で使用する資材の在庫管理などの仕事を担当することに。そこでも、大切にしていたのは『相手の気持ちを想う』ということでした。
「できるだけ現場に入って、社員の皆さんと直接目を見て話をするように心がけました。大切にしていることや困っていることを聞き、そのうえで働きやすいフローを考えるようにしていったんです」
ただ在庫がなくなったからと補充するのではなく、業務のどの段階で対応していれば在庫切れをなくせるのかを聞くなど、現場の声を大切に対応していったのだそう。結果、在庫管理がスムーズになり、業務の効率も上がることに。
「現場がスムーズに動くと、私自身も嬉しくて、店舗での接客と同じようにコミュニケーションの大切さを実感しました」
その後、産休と育休を経て復帰した先が、冒頭にある通信販売の仕事です。
治一郎らしい接客を考える
「オンラインでご注文してくださる方々と接するうちに、お顔が見えなくても店舗での接客と同じだと思うようになりました。治一郎らしい接客とは何かを考えるようになって、できる限りコミュニケーションを大切にしていきたい、と」
例えば、メールでの返信。テンプレートはあるものの、それを機械的に送るのではなく、必ずお客様一人ひとりに合わせた文言を書くようにしています。
また、お客様が注文した時間や購入内容から、どんな生活をされているかを想像してからの対応を心がけていると言います。
「例えば、早朝にお子様の内祝いを注文されていたら、日中は家事や育児で忙しいかもしれないと想像して。お電話するタイミングを考えるようにしています。必ずしも正解ではないかもしれませんが、少しでもお客様のお気持ちに寄り添うようにしたいんです」
ただ、忘れてはいけないのが、お客様のなかには、できる限りコミュニケーションを省きたい方もいるということ。「その見極めが難しくて。だからこそ、できる限り、お客様に思いを馳せて対応することが大切だなと思っています」。
包装や梱包についても同じこと。オンラインでの買い物は、どのような状態で届くのか不安なお客様もいるでしょう。
「店頭であれば、包装したものをお見せすることができますが、オンラインでは実際に手元に届くまでわかりません。だからこそ、包装だけでなく、配送のための梱包にも気を配るようにしています」
適切なサイズの段ボールを選び、商品が崩れたりぶつかったりしないよう、詰め方を考えるのも佐藤さんの仕事です。シミュレーションをしたり、実際に配送をお願いしている取引先と一緒に考えたりしながら進めています。
「しっかりきれいな状態で届いたね、治一郎の商品なら安心だね、と思っていただきたい。そうして初めて、私たちの仕事の意味があるのだと思っています」
自分のしあわせにつながること
お客様とのやりとりに細部まで心を配るのはもちろんのこと、梱包や配送、箱を開ける瞬間までのすべての工程において、いつも想いを込めながらながら仕事に向き合ってきた佐藤さん。改めて、これまでの仕事を振り返ってわかったのは「結局、私は人が好きだということです」と、しみじみ話します。
「コミュニケーションを通して人とつながることがすごく好きで、そこにしあわせを感じているんだな、と思うんです。自分がそういう人間だと、仕事を通して初めて気づくことができました」
コミュニケーションを大切にしながら仕事に取り組む日々は、佐藤さんにとって充実しているに違いありません。
「誠実に働くことで、相手の気持ちに寄り添うことができ、喜びやしあわせにつながると信じています。これからも、どうしたらコミュニケーションがうまくできるのか、お客様や一緒に働く仲間の気持ちに寄り添えるのかを考えていきたいです」と話す姿からは、頼もしさを感じます。仕事は、決して一人でできることではありません。だからこそ相手を想うことを大切に、今日も佐藤さんは真摯に人と向き合っています。