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トラブルを未然に防ぐために、スピード感と使命感を大切に

株式会社梅林機械

山下 茂

トラブルを未然に防ぐために、スピード感と使命感を大切に

 治一郎の商品を作る工場や販売する店舗には、さまざまな機械が使われています。材料を混ぜるミキサー、焼き上げるオーブン、商品を並べるショーケースなど、書き上げればキリがないほど。それらを導入する際のメーカーとのやりとりや、日々のメンテナンスや修理などを担っているのが、梅林機械の山下茂さんです。

 あらゆる機械の構造を知り尽くしているスペシャリスト。今の職について52年が経つと話します。

「もともと機械いじりが好きだったんです。この会社に入ってからは、先輩に教えてもらってさまざまな機械に触れられるようになり、自分はやっぱり手を動かすことが好きなんだと気づきました」

 お客様のさまざまな要望に応えられるように知識と技術を習得してきました。たくさんのメーカーのあらゆる機械を扱っているうえ、それら全てを担当しなければいけないのは、さぞかし大変だったのではないでしょうか。

「なぜこういう構造なのかと突き詰めるのが好きなので、どの機械もおもしろかったですね。昔のアナログ機械の場合は、理屈がわかっていれば難しくないんです」

信条は、すぐに対応すること

 じつに頼もしい山下さんですが、それでもやはり故障には、いつもヒヤヒヤさせられると話します。いつ起こるかわからないうえに、電話があればすぐに現場へ赴き、状況を確認して原因を探って解決していかなければなりません。機械が動かなければ、生産ラインに大きな影響が出てしまいます。

「機械を使うお客様はもちろん、その先にいる商品を待っているお客様にも、ご迷惑をおかけするわけにはいきません。自分の知識を総動員して、一刻も早く修理するようにしています」

 故障が多いのは、どうしても土日や繁忙期になってしまいます。機械をフル稼働しているのでトラブルが起こりやすいのだそう。急いで仕上げなければならない状況下で、山下さんの存在はまさに駆け込み寺のようなもの。

「土日はメーカーさんがお休みのことが多いですが、私なら電話があればすぐに対処できます。製造できなくなってしまうという状況は何としても避けたい。とにかくスピード感が命だと思っています。トラブルに限らず、どんなレスポンスもすぐに返し、すぐに対応することを信条にして仕事に向き合っています」

使命感を持って取り組むこと

 一方で、30年ほど前から機械のデジタル化が進み、状況が変化してきました。
「構造として目では見えない部分が増えてきました。昔は小さな部品を一つ交換すれば解決できたのが、デジタルになると電子で繋がっているのでパーツを丸ごと変えなければいけないんです」

 また、デジタル化された機械を取り入れ始めたころは、故障の原因がわからずに苦労することも多くありました。

「何かに反応して動かないんだろうけれど、内部を見てもわからない。調べていくと車や自動ドアの電磁波が影響していたことがわかりました。新しい機械が出るたびに、今までとは違う問題が起きて、慣れるまでは大変でしたね」

 長年やってきた経験では太刀打ちできない状況で、山下さんの支えとなったのはなんでしょうか?

「使命感です。自分がやらなければいけないんだという気持ちを持って誠実に取り組むことが、仕事の信頼につながると思っています」

自分の目と手でしっかり確認する

 アナログでもデジタルでも、どうしても故障は起きてしまうもの。ただ、未然に防げることもあります。そのために、日々のメンテナンスはとても大切なこと。

「たとえば、治一郎さんにはバウムクーヘンの焼成機が十数台あります。月に一度、しっかりメンテナンスして、ダメになりそうなパーツがあったら、故障する前に交換するようにしています」

 この日も、不具合が起きている電子機器の状態を見ながら、バーナーがすべて正常に動くか確認し、裏に入り込んでガス管の繋ぎ目に劣化がないかライトを当てて確認し……と念入りにチェック。自身の目で見て、手で触って、一つひとつ確かめていきます。横に並んでいる焼成機が正常に動いていることも確認し、すべての作業が終わったかと思うと、別の部屋にある機械をじっと見始めました。何をしているのか聞くと「材料を混ぜている機械があるでしょう? あれもうちが入れたものです。工場に来た時には、できるだけ目視して不具合がないか確かめておきたいんです」と。山下さんの誠実な姿勢が伝わってきます。

 治一郎の店舗にあるショーケースの一部には特注品があります。スペースを効率よく使えるように、奥行きを狭くしたり、既存の出っ張りをなくしたり。どれも山下さんに相談しながら作り上げてきたものです。「冷却装置や曇り止めに必要なファンの寸法を割り出して、どうやったら実現できるか考えていきました。治一郎さんからのアイディアを形にしていくのはやりがいがあります。そういう新しい挑戦は大好きなんですよ」

どの機械も我が子のように愛情を持って

 自身で考えた新しい機械や、何度もメンテナンスして面倒を見ている機械。どれも山下さんにとって我が子のような存在だと話します。

「うちの子たちがしっかり働けているか、いつだって心配です。治一郎のお菓子を食べていても、きれいに焼けているか、カットできているかつい確認してしまうんですよ」と笑います。お客様のためにという山下さんの使命感と愛情は、並々ならぬもの。駆け込み寺のような山下さんの存在が、治一郎のおいしさの支えになっているのは、間違いありません。