治一郎のお菓子が作られ、梱包されて運ばれ、各店舗へと並べられていく。そんな流れのなか、伊藤慎吾さんが担っているのは、商品の包装や梱包の管理。包装されたお菓子を店舗へ送るために梱包し、出荷できるように準備するという仕事です。伊藤さんはセンター長として、納期に合わせてスケジュールを管理し、従業員のシフトを組み立てたり、委託業者へ指示をしたりしている。
「お客様へ安全に届けるための最後の砦といえる部署なんです」と話します。
ヤタローへ入社する前は、とあるカフェの店長として店舗の運営に携わっていました。
「スタッフのシフトや商品、接客、売上金まですべてをチェックして管理していました。思えば、その時の経験が、今の仕事に活きているのかもしれません」と振り返ります。
カフェを辞めた後に短期アルバイトとしてヤタローへ入り、梱包作業を担当。その後、正社員となります。
「正直、社員になるときには悩みました。当時の梱包の部署は、パートのスタッフさんばかり。僕が社員になる目的は、全体のシステムを改善し、新たに構築するということでした。大きな責任が伴う仕事だし、自分にできるだろうか、と。でも、一緒に働いていたパートさんたちがとても協力的な方々だったこともあって、やってみようと飛び込んだんです」
データ化してみえたもの
入社後、ほどなくして部署の改善チームに所属することになります。コンサルタント会社とともに、仕事を効率的に進めるための施策を考えていくというミッションがありました。
「ボトルネックを解消して改善するというプロジェクトです。当時の僕は『ボトルネック』という単語すら理解できていないレベル。本を読んだり、コンサルタントの方と話したりして、ビジネスについて勉強していきました」
ボトルネックとは、一連の業務のなかで、生産性が停滞したり、低下したりしている箇所のこと。伊藤さんの部署の場合は、さまざまな梱包作業があるなかで、どの工程に時間がかかっているのかを分析する必要がありました。
「どんなものをどう詰めるか、いろいろな工程をすべてデータ化したんです。一人でやるとどれくらいの時間がかかるのか、人数を増やしていくとどういう変化があるのか、と数値で見ていったんです」
働く姿勢を変えてくれた学び
それまでは、なんとなく大変だと感じる工程に人数を増やすなど、感覚的にシフトをやりくりして対応していました。それを、実際にデータ化することで目に見えるようにしたというわけです。
「いつもより全体的に時間がかかっている場合、どの工程が問題なのかを見極めるためにはデータが指針となります。時間がかかる工程に人数を割けば改善されるだろうと予測して動くことができる。効率よく作業するには、全体を見なければいけない、という学びになりました。それまでは、自分の担当分のみをきちんとやればいいと思っていたんです。それが全体を考えるようになって、仕事に対するスタンスがガラリと変わりました」
伊藤さんが大切にしているものに、入社当時に社長から渡された本があります。『ザ・ゴール』という一冊で、赤字経営の工場を建て直すという小説。ビジネスの具体的なノウハウが学べる内容です。
「最初は読み解くのが大変でした。でも、改善チームでコンサルタントの方と話すようになってから、改めて理解できるようになったんです。この本に書いてあったのはこういう意味かと腑に落ちることが何度もありました」

現場に出て一生懸命な姿を見せる
効率化のために必要なノウハウを身につけた伊藤さんは、2024年にセンター長へと抜擢されます。業務内容は、納期に合わせて梱包作業の計画を立て、出荷するまでの段取りを組むこと。それに伴うシフトの管理も含まれます。
「いつまでに何を出荷すべきか、そのためにどう進めたらいいかを考えていきます。納期に間に合わせるために、ただがむしゃらにやるのではなく、注力すべき工程を見極めていくようになりました」
自然とデスクワークが増えていきますが、それでもできるだけ梱包作業に加わるようにしているのだそう。
「現場に出ることを大切にしています。僕が一生懸命動くことが、皆さんのやる気にもつながると思って。それに、現場で動くからこそわかる改善点もあります。正解がわからないからこそ、自分で実感することが大事だと思っています」
自ら手を動かすことで学んだのは、部署だけでなく、社内全体での連携が必要ということ。梱包だけ効率化をはかるのではなく、前の段階である製造や包装、さらに自分たちの後に続く物流センターと足並みを揃えなければなりません。
「ただ、それはとても難しいことなんです。それぞれの部署によって効率の良い進め方があります。例えば製造や包装なら、バウムクーヘンはある一定量を一気に焼いて包装したほうが早い。でも、梱包や輸送の観点で考えると、量を半分にして、先に別の焼き菓子をすすめてほしいという場合もある。深くコミュニケーションをとって、連携していけないかと考えているところです」
一緒に働く仲間とお客様のために
ほかに大切にしていることは? という問いに、自身の眉間を指さします。
「考えてばかりいると、ここに皺がよっちゃうんですよね。怖い顔になっているという自覚はあるので(笑)、周りと話すときにはできるだけユーモアを交えるように気をつけています」
正解がわからず、歯がゆいこともある。理想と現実のギャップに悩むことも。それでも、センター長として頑張っていきたいと話します。
「お客様のために、一緒に働くパートさんたちのために、より良い方法を探していきたいです。正解はわからないけれど、どんどん模索していきたい。以前、パートさんに『慎吾くんがいるから続けられているよ』って言われたことが嬉しくて。考えながら、学びながら、進んでいきたいと思っています」
